企業活動において売上が伸びているにもかかわらず、経常利益が増えていない場合は、OPEXの管理に問題がある可能性があります。
事業の規模拡大に伴いOPEXも増加するため、定期的に確認し見直すことが大切です。
この記事では、OPEXの意味や見直す際の注意点をご紹介します。また、同時に把握しておきたいCAPEXについても、比較し解説していますので参考にしてください。
OPEXとは何か|意味や読み方・英語表記を紹介
OPEXの概要|ランニングコストに似たその概念を解説
OPEX(オペックス)とは「Operating Expense」または「Operating Expenditure」を略したものです。
事業運営費のことで、継続して必要な費用を総称してOPEXと呼びます。
概念はランニングコストに似ていますが内訳が少し異なり、減価償却費・支払利息は対象外です。
OPEXが増えるということは、事業の運営費(主に販売費及び一般管理費)が増えることを意味します。
運営に積極的に投資をしているため、今後の事業拡大が期待できます。
ただし、あくまで経費なので、増えすぎないよう注意することも大切です。
OPEXの具体例:主に販売費及び一般管理費に当てはまる
イメージをより深く理解するために、具体例をご紹介しましょう。
OPEXに含まれるものには以下のような費用があります。
- 人件費(給与手当・退職金・福利厚生費等)
- 広告宣伝費
- 研究開発費
- 旅費交通費
- 通信費
- 水道光熱費
営業活動に関連した費用で、多くが損益計算書の販売費及び一般管理費(販管費)に該当します。
ただし、販管費であっても減価償却費は含まれません。
OPEXは発生したタイミングで計上し、運用である程度抑制できる費用です。
【豆知識】不動産投資の場合にOPEXが示すものとは
不動産投資を行う会社では、投資をするために必要な運用費がOPEXに含まれます。
例えば次のような費用です。
- 固定資産税
投資目的で不動産を購入しても固定資産税が課せられます。
通常、固定資産税は年の途中で所有者が変わっても、1月1日時点で所有者になっている人が納税者です。しかし、日割り計算をして購入日以降の納税分は買主から元の所有者へ支払うのが通例となっています。 - 都市計画税
投資目的の不動産が都市計画の市街化区域内にある場合は、固定資産税と共に都市計画税の支払いが必要です。納税対象者は1月1日時点の所有者ですが、実務上は日割計算をした納税分を購入者が清算しています。 - その他
損害保険料や点検・メンテナンス・補修費等の総額がOPEXに該当します。
寒冷地の物件を購入すると、暖房費用や除雪費用も上乗せされるので注意が必要です。
また、投資物件の賃貸管理をアウトソーシングすると、その費用はOPEXに加算されます。
OPEXへの知識を深めるために押さえたい用語「CAPEX」
CAPEXは、OPEXを詳しく知るために、セットで理解しておきたい用語です。
「Capital Expenditure」を略したものでキャペックスと読み、直訳すると資本的支出になります。
不動産や機械設備等いわゆる固定資産の購入や維持管理・補修にかかる費用がCAPEXです。設備投資に掛かる費用と考えるとイメージしやすいでしょう。
CAPEXが増えるということは、企業が積極的に設備投資を行っていることになります。
ただし、支出であることに変わりはありません。必要以上に増えないよう注意が必要です。
特徴を下表で簡単にまとめましたので参考にしてください。
OPEX | CAPEX | |
---|---|---|
目的 | 事業運営 | 設備投資 |
特徴 | 運用で抑制可能 | 高額になることが多い |
例 | 人件費・消耗品費 水道光熱費・支払手数料 | 不動産・機械設備 |
勘定科目 | 費用 | 資産 |
会計処理 | 都度計上 | 減価償却 |
OPEXとCAPEXの違いを3つの観点から把握しよう
①会計・経理上の扱い
会計・経理上の扱いとしては、OPEXは費用・CAPEXは資産と考えて良いでしょう。
原則としてOPEXは発生した都度計上するのに対し、CAPEXは減価償却が行われます。
その年の損益計算書で金額が把握しやすいのがOPEXです。
OPEX:大まかに言うと「経費全般」を取り扱う
OPEXは大まかに言うと経費全般が含まれます。
損益計算書で見ると、「販売費及び一般管理費」に計上されている費用のほとんどが対象です。
ただし、減価償却費等の含まれない費用もあるので注意してください。
OPEXは発生の都度計上する費用なので、当該年度に損益計算書に記載され、管理がしやすいのが特徴です。
CAPEX:会計・経理上では見分けがつきづらい
CAPEXは減価償却が行われる資産のため、損益計算書では把握しにくいのが特徴です。
減価償却費等、部分的には書面上で確認できるものもあります。
企業が設備投資を行った際、明確に管理する会計手法はありません。
きちんと把握していない会社もある一方で、独自の方法で管理している企業もあります。
しかし、長期的な目線で投資設備を管理し、資金繰りを把握するためには、定期的に値をチェックしておくことが大切です。
独自基準を設定して管理することで、コスト削減効果が期待できます。
②管理・削減の仕方
OPEX・CAPEXは、企業が成長し規模が大きくなると増加する傾向がありますが、それぞれ管理・削減の仕方が異なります。
OPEXは主に販管費を抑えることで削減可能です。CAPEXは財務三表を活用します。
どちらもただ削減すれば良いわけではなく、無駄を省くこと・適切な投資を行うことが大切です。
OPEX:人件費・外注費等の見直し
人件費等の販管費がメインになるOPEXは、むやみに削減すると品質や生産性・モチベーションの低下を招きかねません。
長期的な目線で計画を立てて削減していくことが大切です。
OPEXの中でも削減効果が出やすい3つの費用について見直し方法をご紹介します。
■人件費
人件費を減らすには、業務改革を優先することが大切です。
業務の見直しをしないまま人を減らせば、残った社員の負荷が増え、生産性が下がる可能性もあります。既存業務を見直し業務フローを改善することで人員の配置を最適化すれば、残業代の削減が可能です。結果として人件費の削減に繋がります。
■支払手数料
事業が拡大することに伴って増えてしまう振込手数料は、削減するとしても振込件数を減らすわけにはいきません。
そのため、次のような方法で振込単価を減らすことが重要です。
- ネット銀行や当座預金を利用する
- 社員の給与振込口座を同一銀行同一支店にする(強制はできないため社員に働きかける)
- 振込代行サービスを利用する
■消耗品費
経費の削減に着手しやすく、効果が数字に表れやすいのが消耗品の削減です。
削減できる金額はひとつひとつは少ないですが、コツコツ積み重ねることで大きな成果が得られます。具体的には、次のように身近な部分の努力や効率化の副産物として削減できるのがポイントです。
- 購入する消耗品を低価格なものに切り替える
- 消耗品の在庫をきちんと管理し無駄遣いをしない
- 業務のIT化を図り印刷する量を減らす
CAPEX:財務三表を活用
CAPEXの管理・削減には、企業の経営状況の判断に用いられる財務三表を活用します。
中でも、現金の流れを把握できるキャッシュフロー計算書には、CAPEXの影響が現れるのでチェックが必要です。
企業が固定資産を購入した場合は、キャッシュフロー計算書を見ると現金がいくら減っているかがわかります。
CAPEXは、貸借対照表の資産として表示されます。損益計算書では減価償却費しか反映されません。そのため、投資を上回る利益が出ていなくても黒字であるかのように見えるでしょう。
キャッシュフロー計算書の確認を怠ると、CAPEXのコントロールができず黒字倒産を引き起こす危険が伴います。いつの間にか会社が資金ショートを起こしてしまうのです。
黒字倒産を防ぐためにも、キャッシュフロー計算書で現金の流れを管理することが求められます。
③増加が見られた時の会社の状況
費用にしても資産にしても、現金が多大に流出するのは好ましくありません。
しかし、積極的な出資を行っている結果とも考えられるのです。
ここでは、OPEXやCAPEXが増えた時は、会社は何に出資しているのか、どのような状況だと判断できるのかを解説します。
OPEX:運営への出資の積極性
OPEXは販管費に多く含まれることから、増加すると経費の使い過ぎが懸念されます。
増えすぎた経費は削減することが必要です。実際「経費削減」を掲げ、積極的に販管費を減らす努力をする会社もあります。
しかし、OPEXの増加は経費が増大してしまっただけとは限りません。
雇用を増やす・単価を上げるといった積極的な投資を行っているという可能性があります。
また、CAPEXからOPEXに切り替えている結果とも考えられるでしょう。
CAPEXは金額が大きく、リターンに結び付くまでに時間がかかるため、資産的なリスクが伴います。OPEXに移行するのはそのリスクを回避するためです。
CAPEX:設備への出資の積極性
CAPEXが増加しているということは、企業が積極的に設備投資を行っていることを意味します。土地の購入、建物や工場の拡張、大規模なシステムの導入等を行っているのでしょう。
CAPEXは投資から回収までに数年はかかるものです。事業を拡大し長期にわたって収益を上げていこうとしている姿勢が見られます。
ただし、計画通りに利益が上がらないリスクが伴います。費用対効果が出なければ、企業には大きなダメージです。
投資した設備が大きな利益をもたらすよう、綿密な計画を立てることが必要になります。
OPEX化が進み続けるのはなぜか
近年、OPEX化を進める企業が増えています。
特に、IT業界にその傾向が顕著に表れています。
これまでIT業界において、システムを導入するとなれば、自社にサーバーやネットワーク設備を構築し、必要なソフトウェアをインストールしていました。
構築にかかる費用は膨大です。導入の結果、予想した効果が発揮され投資分を回収できるとは限りません。
しかし、結果が出なくても仕組みを使い続ける以上は、バージョンアップやサーバー本体の入替え等、メンテナンスの費用も必要です。
IT機器や仕組みの進歩はめまぐるしく、利益の回収に結び付かないまま、システムが陳腐化してしまう危険もあります。
そこで、登場したのがIT環境のクラウド化です。
自社に設備を構えず、クラウド上のサービスを利用すること、すなわちCAPEXを削減しOPEXに切り替える動きが顕著になってきたのです。
OPEX見直しの注意点|業界・戦略別に異なるポイントを解説
OPEXを見直す際の注意点は、業界や戦略によって異なります。
OPEXの比率が高くなる業界では、OEPX低下がサービスの低下に直結する可能性が高いため、削減は慎重に行う必要があるでしょう。
具体的には、通信業・製造業・サービス業等の業界が挙げられます。
前述した通り、OPEX化が特に進んでいるIT業界も同様です。
通信業では、仮想移動体通信事業者(MVNO)のOPEX比率は高いです。
MVNOは、設備を持たずにモバイルインターネット接続サービスを提供しています。
必要な設備はキャリアの仕組みを借り、独自の付加価値をつけて通信業に参入するビジネスモデルです。
投資設備をほとんど持たない分、OPEXを削減するには長期的な計画が必要になるでしょう。
サービス業では、特に高級路線のサービスを提供している企業は、OPEXが高くなります。
戦略として、顧客の満足度を高めること・ブランドの価値の向上が優先されるためです。
一等地にあるホテルやラグジュアリーブランドの業界では、他業界に比べるとOPEXが高く、削減が難しい傾向にあります。
OPEXの削減に寄与するクラウドサービス「oneplat」
業界や戦略によりますが、OPEXは今後も増加する傾向にあるでしょう。
しかし、全体の傾向としてOPEX比率が増えても、経費である以上OPEXが増えすぎるのはリスクを伴います。削減可能なコストであれば、省いていくことが大切です。
請求書や納品書を電子化できる「oneplat」を導入すれば、多くの業界でOPEXの削減に貢献できます。
「oneplat」なら、印刷費や紙のコストが削減できるだけでなく、納品書や請求書の入力の手間・保管管理にかかる費用も大幅に減らすことが可能です。業務時間が減り担当者の負担が減ることでコストの削減が図れます。
また、会計システムと連携することで、転記ミスや入力漏れを防ぎつつ、コスト削減のための分析資料を簡単に作成することも可能です。
「oneplat」の導入は、企業のOPEX削減に役立つでしょう。
まとめ
CAPEXと比較しながら、OPEXの意味や管理・削減方法を説明してきました。
OPEXは販管費に多く含まれる人件費や支払手数料・消耗品費等、事業運営に必要な費用です。会計上は都度計上するため、年度の損益計算書で把握できます。
近年、IT業界を中心にOPEX化の動きが顕著になっています。
OPEX比率が高く削減が難しい業界もありますが、抑えられるコストは削減して利益を上げることが重要です。
「oneplat」は、企業のサービスレベルを保ちつつOPEX削減を検討するのに適しています。
この機会に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。